西山拙斎にしやませっさいは、享保きょうほう２０（１７３５）年ねん、今いまの浅口市鴨方町あさくちしかもがたちょうに医者いしゃの恕玄じょげんの子ことして生うまれました。１６才さいのとき、大阪おおさかに出でて医学いがくを古林見宜堂ふるばやしけんぎどうに、儒学じゅがくを那波魯堂なばろどうに教おそわりました。
　父ちちが病気びょうきになったのでいったん帰郷ききょうしましたが、そのまま亡なくなったので喪に服も　ふくした後あと、２０才さいのとき上京じょうきょうして古文辞学こぶんじがくを学まなび、３０才さいにして徂徠学そらいがく（江戸中期えどちゅうきの儒者荻生徂徠じゅしゃおぎゅうそらいが唱となえた儒学思想じゅがくしそう）のよくないところを感かんじとって、先生せんせいである魯堂ろどうとともに朱子学しゅしがくを勉強べんきょうするようになりました。明和元しょうわがん（１７６４）年ねん、朝鮮通信使ちょうせんつうしんしと会談かいだんしたときに朱子学しゅしがくが正学せいがくとなると確信かくしんしました。
　３９才さいのとき、故郷こきょうの鴨方かもがたへ帰かえり、私塾しじゅく「欽塾きんじゅく」をつくり、子弟していの教育きょういくに専念せんねんしました。いろいろな大名だいみょうからまねかれましたが、病弱びょうじゃくであったことと、生うまれつき物事ものごとにとらわれるのを嫌う性格きら　せいかくであったことが理由りゆうで、生涯しょうがいにわたって役人やくにんにはなりませんでした。
　当時全国的とうじぜんこくてきに学風がくふうが乱みだれているのを嘆なげき、幕府ばくふの儒官じゅかんである柴野栗山しばのりつざんに朱子学しゅしがくを正学せいがくとする学制がくせいの統一とういつを説とき、 これが寛政かんせい２（１７９０）年ねんに老中松平定信ろうじゅうまつだいらさだのぶが行おこなった寛政改革かんせいかいかくの一ひとつである「寛政異学の禁かんせいいがく　きん」となりました。
　西山拙斎にしやませっさいは、「鴨方かもがたに過すぎたるものが三みっつある。拙斎せっさい、索我さくが、宮の石橋みや　いしばし」と歌うたわれ、いまなお土地とちの人々ひとびとから慕したわれています。