児島虎次郎こじまとらじろうは、明治めいじ１４（１８８１）年ねん、今いまの高梁市成羽町たかはししなりわちょうで生うまれました。
　子こどものころから絵えが得意とくいで、２０歳さいの時ときに上京じょうきょうし、東京美術学校とうきょうびじゅつがっこうに入学にゅうがくしました。その頃ころ、倉敷くらしきの実業家じつぎょうかである大原孫三郎おおはらまごさぶろうと出会であい、学資援助がくしえんじょを受うけるようになりました。
　東京美術学校とうきょうびじゅつがっこうの恩師おんしである黒田清輝くろだせいきのすすめで、石井十次いしいじゅうじが経営けいえいする岡山孤児院おかやまこじいんを描えがいた「情なさけの庭にわ」と、ふるさと成羽なりわの水車小屋すいしゃごやを描えがいた「里さとの水車すいしゃ」を明治めいじ４０（１９０７）年ねんに行おこなわれた博覧会はくらんかいに出品しゅっぴんしました。すると、「里さとの水車すいしゃ」が博覧会はくらんかいで１等賞とうしょうを受賞じゅしょうし、「情なさけの庭にわ」は宮内庁くないちょうの買かい上あげとなったことで、一気いっきに名前なまえが世間せけんに知しれわたりました。
　虎次郎とらじろうの勤勉きんべんな性格せいかくが気きに入いられ、１歳年上さいとしうえの孫三郎まごさぶろうとは生涯親交しょうがいしんこうを持もち、経済的援助けいざいてきえんじょを受うけ続つづけました。
　絵画制作かいがせいさくでは独自どくじのスタイルを模索もさくし続つづけた彼かれでしたが、孫三郎まごさぶろうからの依頼いらいを受うけ絵画買かいがかい付つけのため数度すうどヨーロッパに渡わたり、モネ、エル・グレコ、ゴーギャン、ロダンなどの作品さくひんを購入こうにゅうしました。この収集品しゅうしゅうひんが今いまの大原美術館おおはらびじゅつかんの基礎きそを作つくりました。
　大正たいしょう１３（１９２４）年ねんに明治神宮奉賛会めいじじんぐうほうさんかんより明治天皇めいじてんのうを讃たたえる壁画へきがの作成さくせいを依頼いらいされましたが、志半こころざしなかばにして病気びょうきになり、壁画へきがの完成かんせいをすることなく昭和しょうわ４（１９２９）年ねんに４７歳さいで生涯しょうがいを閉とじました。なお、この壁画へきがは友人ゆうじんの吉田苞よしだしげるにより昭和しょうわ９（１９３４）年ねんに完成かんせいし、明治神宮聖徳記念絵画館めいじじんぐうせいとくきねんかいがかんに展示てんじされています。