玉島黒崎たましまくろさきの沙美海岸さみかいがんの近くに三角形の人工池じんこういけがあります。天明てんめい６年(１７８６)、鴨方かもがたの朱子学者しゅしがくしゃ西山拙斎にしやませつさいがここを訪おとずれたとき、沙美さみの人々の純朴じゅんぼくさにうたれ、『沙美さみの浦歌うらうた』という詩をつくりました。
　この詩を読み感動した倉敷代官菅谷長昌くらしきだいかんすげのやながまさは、寛政元年かんせいがんねん(１７８９)にこの地を訪おとずれ、拙斎せつさいの歌ったとおりの人情風情にんじょうふぜいに触ふれました。菅谷長昌すがのやながまさが拙斎せつさいの詩とともに、ここで見聞みききしたことを幕府ばくふに報告ほうこくしたところ、幕府ばくふから白銀はくぎん２０枚が沙美さみの人々に下賜かしされました。
　沙美さみの人々はこの栄誉えいよを後世こうせいに伝えようと、皆みなで農業用水のうぎょうようすいを蓄たくわえるための溜池ためいけを造つくり、恵池めぐみいけと名付なづけました。そして、池の北端ほくたんには拙斎せつさいがこの経緯けいいを記しるした文をつくり、曽道怡そどういが筆を取った碑ひが建たてられたのです。