磯崎眠亀いそざきみんきは天保てんぽう５（１８３４）年ねん、今いまの倉敷市茶屋町くらしきしちゃやまちの織物屋・児島屋おりものや　こじまやの家いえに生うまれました。
　早はやくに父母ふぼを亡なくした眠亀みんきは、領主りょうしゅである戸川氏とがわしの江戸えどの屋敷やしきで仕つかえることになったものの、先祖せんぞから受け継う　つがれた開拓魂かいたくだましいと創造性そうぞうせいが眠亀みんきの心こころを揺ゆるがし、再ふたたび織物おりものの世界せかいへ舞まい戻もどりました。
　天職てんしょくを得えた眠亀みんきは、織機しょっきの改良かいりょうや発明はつめいによって、次々つぎつぎと新あたらしいものを生み出う　だしていきました。
　こうしたなか、ウィーン万国博覧会ばんこくはくらんかい（１８７３年開催ねんかいさい）に出品しゅっぴんされたセイロン産さんの竜鬢莚りゅうびんむしろ（花はなござの一種いっしゅ）を見みて、岡山特産おかやまとくさんのい草を使くさ　つかった精巧緻密せいこうちみつなむしろ(敷物しきものの一種いっしゅ)をつくろうと思い立おも　たち、明治めいじ１１（１８７８）年ねん、苦労くろうの末に花すえ　はなむしろ「錦莞莚きんかんえん」の発明に成功はつめい　せいこうしました。
　しかし、「錦莞莚きんかんえん」は高価こうかすぎて国内こくないではあまり売うれませんでしたが、日本にほんの輸出品ゆしゅつひんとして重要輸出品目じゅうようゆしゅつひんもくになり岡山県おかやまけんの代表的だいひょうてきな特産品とくさんひんになりました。
　そのため技術保護ぎじゅつほごにも配慮はいりょし、日本にほんの特許制度とっきょせいどの基礎きそをつくることにもつながっています。
　産業さんぎょう、資本主義しほんしゅぎの育成いくせいにより国家こっかの近代化きんだいかを推進すいしんしたことが評価ひょうかされ、明治めいじ３０（１８９７）年ねんに緑綬褒章りょくじゅほうしょうを受章じゅしょうしました。
　青年時分せいねんじぶんから筋を通す癖すじ　とお　くせがあり、外国商人がいこくしょうにんの卑劣ひれつな商法しょうほうにただ一人真正面ひとりましょうめんから戦たたかったことがあります。
　改修かいしゅうされた旧宅きゅうたくは、昭和しょうわ６３（１９８８）年ねん、磯崎眠亀記念館いそざきみんききねんかんとして開館かいかんし、平成へいせい１２（２０００）年に国ねん　くにの登録有形文化財建造物とうろくゆうけいぶんかざいけんぞうぶつに指定していされました。