森田思軒もりたしけんは、文久元ぶんきゅうがん（１８６１）年ねん、今いまの笠岡市笠岡西本町かさおかしかさおかにしほんまちに生うまれました。
　慶應義塾けいおうぎじゅくで英語えいごを、井原いばらの興譲館こうじょうかんで漢詩文かんしぶんを学まなびました。
　その後上京ごじょうきょうし、矢野龍渓やのりゅうけいが運営うんえいする郵便報知新聞社ゆうびんほうちしんぶんしゃに入社にゅうしゃし、文筆家ぶんぴつか、新聞記者しんぶんきしゃとして活躍かつやくしましたが、とくに翻訳家ほんやくか・批評家ひひょうかとして有名ゆうめいで、徳富蘇峰とくとみそほうが運営うんえいする「国民之友こくみんのとも」にも論文ろんぶん・翻訳小説ほんやくしょうせつを寄稿きこうしました。
　翻訳ほんやくの代表的だいひょうてきな作品さくひんに、ヴィクトル・ユゴー原作げんさくの『探偵たんていユーベル』『死刑前しけいまえの六時間ろくじかん』、ジュール・ベルヌ原作げんさくの『十五少年じゅうごしょうねん』（十五少年漂流記じゅうごしょうねんひょうりゅうき）などがあります。
　西洋文学せいようぶんがくのおもしろさや魅力みりょくを広ひろく紹介しょうかいし、翻訳文ほんやくぶんを文学作品ぶんがくさくひんにまで高たかめるきっかけとなりました。岡倉天心おかくらてんしん、森鴎外もりおうがい、幸田露伴こうだろはんらとも親交しんこうがありました。
　明治めいじ３０（１８９７）年ねん、３６才さいで、腸ちょうチフスを発症はっしょうして亡なくなり、東京都台東区根岸とうきょうとたいとうくねぎしの世尊寺せそんじに葬ほうむられましたが、笠岡かさおかの小丸しょうまる（笠岡小学校裏手かさおかしょうがっこううらて）の墓地ぼちにも分骨ぶんこつして墓はかがつくられました。
　生涯しょうがいにわたり多おおくの作品さくひんｂを発表はっぴょうした思軒しけんは、「翻訳王ほんやくおう」ともよばれました。