旧きゅう主屋おもやに付属ふぞくする座敷ざしき棟とうで、木造もくぞう平屋ひらや建だて・本瓦ほんかわら葺ぶきの建物たてものです。天明てんめい年間(１７８１～１７８９)に建たてられたと伝えられ、備後びんご国こく神辺かんなべ(現在の広島県ふろしまけん福山ふくやま市神辺町)出身の儒学者じゅがくしゃである菅茶山かんちゃざんによって「西爽亭さいそうてい」と名付づけられました。
　西爽亭の中で、建築けんちく上特とくに優すぐれているのが、御成おなり門と座敷棟にある式台玄関げんかんです。通とおりに面する御成門は、本瓦葺きの薬医やくい門形式で、屋根やねの四隅よすみに凝こったデザインの鬼瓦おにがわらを乗せています。式台玄関は幅が２間あり、入母屋の屋根で、唐から破風はふ様ようの妻飾つまかざりがついています。
　式台玄関を入ると、「取次とりつぎの間」「次の間」「上の間」と続つづきます。「次の間」「上の間」は、天井てんじょうが比較ひかく的てき高く、ゆったりとした数寄屋すきや風の書院しょいんになっています。さらに奥おくへ進すすむと湯殿ゆどの・小便所べんじょ・大便所・手洗てあらいがあり、江戸えど時代じだいの上級武士ぶしの生活の様子ようすがうかがわれます。
　このような建築物群けんちくぶつぐんは、庭園ていえんの石組みとあわせて、天明期きの趣おもむきを漂ただよわせています。