「太鼓田植たいこたうえ」は、岡山県おかやまけんの北西部ほくせいぶで伝承でんしょうされている田植たうえ行事ぎょうじであり、「はやし田植たうえ」ともよばれています。「太鼓田植たいこたうえ」は、古ふるくは田楽でんがくとして平安時代へいあんじだいから伝つたえられています。田植歌たうえうたは、田たの神様かみさまへの豊作祈願ほうさくきがんの意味いみを込こめて、地区ちくの共同労働きょうどうろうどうの習慣しゅうかんと結むすびあって発達はったつしました。
　行事ぎょうじの内容ないようは、早朝そうちょう、牛うしを使つかって田たを均等きんとうにならし（しろかき）、さらに柄えぶりを使つかって田たを平たいらにします。その後ご、太鼓たいこを打うって音頭おんどをとる「サゲ」と呼よばれる人ひとが、帯おびで体からだの前まえに支ささえた太鼓たいこを両手りょうてのバチで叩たたきながら唄うたを歌うたうと、「植うえ子こ」と呼よばれる早乙女さおとめが一緒いっしょに、苗なえを植うえます。唄うたは、「朝あさのうた」からはじまり、昼ひるが近ちかづくと「昼前ひるまえのうた」になり、午後ごごは「酒さけつくり」「京きょうのぼり」「田主たぬしのやかた」などが唄うたわれ、「夕方ゆうがたのうた」を唄うたい終おわると一日いちにちの作業さぎょうが終了しゅうりょうします。
　昭和しょうわ３０年ねん（１９５５年ねん）頃ごろまでは新見市にいみしの神郷しんごう地区ちくや哲西てっせい地区ちくでは、田植歌たうえうたが聞きこえていましたが、一時期聞いちじきかんこえなくなり、現在げんざいは、地域ちいきの保存会ほぞんかいにより次つぎの世代せだいの子こどもたちに伝つたえる活動かつどうが行おこなわれています。