井戸平左衛門いどへいざえもんは、寛文かんぶん１２（１６７２）年ねん　に生うまれました。
　享保きょうほう１６（１７３１）年９月ねん　がつ、６０才さいのとき、石見銀山いわみぎんざんを受け持う　もつ石見国大森いわみのくにおおもり（今いまの島根県大田市しまねけんおおたし）の代官だいかんに任命にんめいされました。翌年よくねんから、備中国笠岡代官びっちゅうこくかさおかだいかんを兼務けんむしました。
　このとき西日本一帯にしにほんいったいはウンカの大発生だいはっせいによっていまだかつてない大飢饉だいききんとなっていました。平左衛門へいざえもんは事態じたいが一刻いっこくを争あらそうと判断はんだんして、幕府ばくふの命令めいれいを待またずに独断どくだんで代官所だいかんしょの米蔵こめぐらを開放かいほうして、飢うえた人々ひとびとに米こめを与あたえたといいます。また、被害ひがいの大おおきな村々むらむらの年貢ねんぐを思おもい切きってやめ、ひとびとに助たすけ合あいの心こころを説ときました。さらに、やせた土地とちでもとれる食物しょくもつとして甘藷（サツマイモ）をとりよせて育そだてさせ、飢饉ききんをしのぎました。こうした平左衛門へいざえもんの努力どりょくが実みのって、笠岡かさおかではひとりも飢え死う　じにする人ひとはなかったと伝つたえられています。今いまでも笠岡かさおかの人々ひとびとは、平左衛門へいざえもんのことを「いも代官」だいかんと呼よび、いつまでも感謝かんしゃの気持きもちを持もっています。
　平左衛門へいざえもんの死後しご、各地かくちに功績こうせきをたたえる頌徳碑しょうとくひが建たてられました。その数かずは数百ヵ所すうひゃっかしょにもなるそうです。墓はかは笠岡かさおかの曹洞宗威徳寺そうとうしゅういとくじにあり、笠岡市指定史跡かさおかししていしせきとなっています。